アメリカ生活 エッセイ

アメリカ生活から学んだこと(その3)

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留学生活も慣れてきたころ、語学学校で知り合った仲間と一人暮らしをしている子のアパートへ行っては、一緒にご飯を作り、勉強をして、映画を観て、将来の夢を語り合った。それぞれちゃんと考えて留学しにきているのだと分かると、頑張っているのは自分だけじゃないと元気をもらえた。皆の目がキラキラ光って綺麗だったのをいまも覚えている。

刺激的な時間のあと帰宅すると、ホームステイ先の玄関は施錠されて入ることができなかった。現実はそんなに甘くなかった。26歳で門限破って、サンタモニカの住宅地で締め出されるとは…。これをきっかけに友達の家に泊まることが多くなった。

 

それでもバーバラは決して意地悪だったり、嫌な性格だったわけではない。私が寂しくて心細いときによく声をかけてくれたり、拙い私の英語に付き合ってくれたり、足がない私のために車を出してくれたり、ときにはドライブに連れて行ってくれたりもした。

日常生活を共有したことで、ひとりのアメリカ人女性を通じてアメリカという国とそこに住む人たちを少し学ぶことができたと思う。そこには日本人と違う確固とした価値観や世界観が根付いていた。日本人は兎角まじめで綺麗好き、でも細かすぎて相手の失敗を許す余裕がなくなったりするが、アメリカ人の彼女は自然や動物を愛し、つねに自然に自分を取り戻す術を持っているようにみえた。彼女は例外ではなく、出会ったアメリカ人の多くはナチュラルで自然を大切にしていた。

 

日本を離れ、異文化の中で初めて伝統や格式のある日本文化の素晴らしさを実感した。これはとても重要で大切なことだと思う。近くにいると本質が見えない、だから少し離れて見るといいと高校のときの担任が言っていた。本当に先生の言う通りだ。物事を良し悪しで判断することも必要だが、文化や歴史においては表層部分だけをみて決めてかかるとあらゆる障害がおこる。ことに人の生き方や考え方にも言えると思う。

40代になって分かることがある。時折、20代の自分に言ってあげることにしている。失敗を恐れず経験した自分を誇りに思うよと。見えない未来、不安だらけの20代の自分をほめることにしている。誰も認めてはくれなくても勇気を出して決断したあなたがした冒険は今の私の財産になっているよと。そしてあなたが経験したことは、残りの人生を豊かにするために必要不可欠だったと。そしてあなたが苦しんで悩んで決めたことは正解だったよと。

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